PMSとうつ病は併発する?毎月くり返す心の不調の正体と対処法を徹底解説

「生理前になると、まるで別人のように落ち込んでしまう」
「この耐えがたい気分の波は、単なるPMSなの?それとも、うつ病が関係しているの?」

毎月繰り返される深刻な精神不調に、一人で悩み、混乱している方は少なくありません。
仕事や日常生活に支障をきたすほどの辛さを感じながらも、その正体が分からず、どう対処すれば良いのか途方に暮れてしまうこともあるでしょう。

このブログでは、そんなあなたのための羅針盤となることを目指します。
PMS(月経前症候群)や、より症状が重いPMDD(月経前不快気分障害)とうつ病が併発する可能性について、そのメカニズムから具体的な見分け方、そして治療法までを徹底的に解説します。
このブログを読めば、ご自身の状態を客観的に理解し、次にとるべき行動が明確になるはずです。
もう一人で抱え込まずに、一緒に解決の糸口を探していきましょう。

目次

まず知りたい「PMS」「PMDD」「うつ病」の基本的な違い

心の不調について考えるとき、PMS、PMDD、うつ病という言葉を耳にすることがあります。
これらの症状は似ている部分もありますが、原因や特徴には明確な違いが存在します。
まずは、それぞれの基本的な違いを理解し、ご自身の状態を整理するための土台を作りましょう。

身体と心の不調「PMS(月経前症候群)」と重症型「PMDD(月経前不快気分障害)」

PMS(月経前症候群)は、多くの方が経験する月経前の不調です。
その症状は多岐にわたり、身体的なものから精神的なものまで様々です。

  • 主なPMSの症状
    • 身体的症状: 下腹部痛、頭痛、乳房の張り・痛み、むくみ、眠気、だるさ
    • 精神的症状: イライラ、怒りっぽくなる、気分の落ち込み、集中力の低下、涙もろくなる

一方で、PMDD(月経前不快気分障害)は、これらの症状、特に精神症状が極めて重く、日常生活に深刻な支障をきたす状態を指します。
これは単に「PMSがひどい」というレベルではなく、米国精神医学会の診断基準(DSM-5)でも独立した精神疾患として認められています。
診断基準には、「著しい感情の不安定さ」「著しい苛立ち」「著しい抑うつ気分」「著しい不安・緊張」のうち、少なくとも1つ以上が必須とされています 。
つまり、PMDDの核には、コントロールが難しいほどの精神的な苦痛があるのです。

持続する気分の落ち込み「うつ病」

うつ病は、気分の落ち込みや何事にも興味が持てないといった状態が長く続く精神疾患です。
その最大の特徴は、PMSやPMDDと異なり、症状の出現が月経周期と直接関連しない点にあります。
気分の波はもちろんありますが、それが生理のタイミングと一致するわけではなく、2週間以上にわたってほぼ毎日、一日中続くのが特徴です。

  • 主なうつ病の症状
    • 抑うつ気分(わけもなく悲しい、憂うつだ)
    • 興味や喜びの喪失
    • 食欲の減退または増加
    • 睡眠障害(眠れない、または寝すぎる)
    • 意欲の低下、おっくうに感じる
    • 罪悪感、無価値感
    • 思考力や集中力の低下
    • 死にたいという気持ち(希死念慮)

PMS/PMDDとの最も重要な違いは、この「周期性」の有無です。
ご自身の不調がいつ始まり、いつ終わるのかを意識することが、状態を理解する第一歩となります。

PMS/PMDDとうつ病は併発する?その深刻な実態とメカニズム

「私のこの辛さは、PMSとうつ病、両方なのでは?」という疑問は、決して的外れなものではありません。
結論から言うと、PMS/PMDDとうつ病は併発する可能性があり、それは決して稀なことではないのです。
ここでは、その深刻な実態と、なぜ併発が起こるのかという背景にあるメカニズムについて掘り下げていきます。

3〜5割が併発?無視できないPMDDとうつ病の深い関係

衝撃的なデータですが、PMDDと診断された方のうち、実に30〜50%が過去にうつ病を経験しているか、あるいは現在うつ病を併発していると報告されています 。
もしあなたが両方の可能性を感じているとしても、それは決して珍しいことではなく、多くの人が同じ悩みを抱えているのです。

なぜ併発が起きるのか?女性ホルモンと脳の複雑な関係

では、なぜPMDDとうつ病はこれほどまでに深く関連しているのでしょうか。
その鍵を握るのが、月経周期に伴う女性ホルモンの劇的な変動です。
特に、排卵後から月経前にかけての「黄体期」には、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンが大きく変動します。

このホルモンの波が、脳内の神経伝達物質、とりわけ「幸福ホルモン」とも呼ばれるセロトニンの働きに影響を与えると考えられています。
セロトニンは気分や感情の安定に深く関わる物質であり、その機能が低下すると、うつ病やPMDDの精神症状が引き起こされやすくなるのです 。
つまり、ホルモン変動という生理的な現象が、脳の化学的なバランスを乱し、心の不調という形で現れるのです。

【セルフチェック】あなたの症状はどれ?3つのパターンで見分けるポイント

ご自身の症状を客観的に把握するために、簡単なセルフチェックを行ってみましょう。
ただし、これはあくまで状態を整理するための目安であり、医学的な診断に代わるものではありません。
最終的な判断は、必ず専門の医師に相談してください。

見極めの鍵は「周期性」|症状日記をつけてみよう

最も重要な見分け方のポイントは、症状が現れる「周期性」です。
これを客観的に把握するために、日々の心と体の状態を記録する「症状日記」をつけることを強くお勧めします。
日記をつけることで、自分でも気づかなかった症状のパターンが見えてきます。

記録する項目具体的な内容・記録のポイント
日付・月経周期月経開始日を1日目として、今が周期の何日目かを記録します。
具体的な症状「激しい不安感」「涙が止まらない」「下腹部が重い」など、感じたことを具体的に書きます。
症状の強さ1(全くない)〜5(非常に強い)のように、点数で記録すると比較しやすくなります。
日常生活への影響「仕事に集中できなかった」「家族と口論になった」など、具体的なエピソードを記録します。
その他食事内容、睡眠時間、運動の有無、ストレスを感じた出来事などもメモしておくと役立ちます。

この日記を2周期以上つけてみると、ご自身の不調が「月経前に集中している(PMDDの可能性)」「月経に関係なく続いている(うつ病の可能性)」「もともとうつ病があり、月経前に特に悪化する(月経前増悪:PME)」といったパターンが見えてくるはずです 。

自己判断は危険!うつ病やPMDDと間違えやすい他の病気

セルフチェックは有用ですが、安易な自己判断には大きなリスクが伴います。
なぜなら、うつ病やPMDDの症状は、他の病気と非常によく似ていることがあるからです。
特に注意が必要な病気には、以下のようなものがあります。

  • 甲状腺機能の異常:
    特に女性に多い甲状腺の病気は、気力の低下、だるさ、気分の落ち込みなど、うつ病とそっくりの症状を引き起こすことがあります 。
    血液検査で簡単に調べられるため、鑑別が非常に重要です。
  • 更年期障害:
    40代以降の女性では、女性ホルモンの減少によって、ホットフラッシュなどの身体症状に加え、抑うつや不安といった精神症状が現れることがあります。
  • 双極性障害:
    気分の高揚(躁状態)と落ち込み(うつ状態)を繰り返す病気です。
    うつ状態の時期だけを見ると、うつ病と区別がつきにくいことがあります 。
  • 貧血:
    鉄分が不足すると、めまいや倦怠感だけでなく、集中力の低下やイライラといった精神的な不調を引き起こすことがあります。

これらの病気を見逃し、不適切な対応を続けると、症状が悪化してしまう可能性があります。
だからこそ、専門医による正確な診断が不可欠なのです。

どこへ相談すればいい?PMS・うつ病併発の治療と受診の目安

つらい症状に悩んだとき、「何科に行けばいいの?」と迷ってしまうのは当然のことです。
PMS/PMDDとうつ病の併発が疑われる場合、主に「婦人科」と「心療内科・精神科」が相談先となります。
ここでは、それぞれの役割と、あなたの症状に合わせた受診先の選び方を解説します。

婦人科?心療内科?症状別の受診先の選び方

どちらを受診すべきか迷った際は、現在最もつらい症状を目安に考えてみましょう。

受診先こんな症状の方におすすめ主なアプローチ・特徴
婦人科– 下腹部痛や頭痛、乳房の張りなど身体症状が特につらい
– 月経不順や過多月経など、他の婦人科系の悩みもある
– まずはホルモンバランスの観点から相談したい
– ホルモン療法(低用量ピルなど)や漢方薬による治療が中心
– 内診や超音波検査で他の婦人科疾患がないかを確認できる
心療内科・精神科– 気分の落ち込み、不安、イライラ、希死念慮など精神症状が日常生活に深刻な影響を与えている
– PMDDやうつ病の可能性を強く感じている
– 専門的なカウンセリングを受けたい
– 抗うつ薬(SSRIなど)による薬物療法やカウンセリングが中心
– 精神疾患の専門的な診断と治療が受けられる

理想的なのは、婦人科と精神科が連携して治療にあたってくれる医療機関です。
しかし、まずはどちらか一方でも構いません。
勇気を出して相談すれば、医師が必要に応じて適切な専門医を紹介してくれます。

主な治療法の選択肢|薬物療法からカウンセリングまで

PMDDとうつ病の併発に対する治療は、一つの方法に固執せず、多角的なアプローチで行われます。
あなたに合った治療法を見つけるために、どのような選択肢があるのかを知っておきましょう。

治療法主な目的と特徴
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)脳内のセロトニン濃度を安定させることで、気分の落ち込みや不安、イライラを和らげます。うつ病だけでなく、PMDDの精神症状にも高い効果が認められています 。
低用量ピル(ホルモン療法)排卵を抑制し、女性ホルモンの変動を穏やかにすることで、PMS/PMDDの症状を根本から緩和します。特に身体症状に効果的ですが、精神症状の改善も期待できます。
漢方薬個々の体質(証)に合わせて処方され、心と体のバランスを整えることで症状の緩和を目指します。「当帰芍薬散」「加味逍遙散」などがよく用いられます。
カウンセリング(認知行動療法など)物事の捉え方や考え方の癖を見直し、ストレスへの対処法を身につけることで、気分の波にうまく対応できるようになることを目指します。薬物療法と並行して行うとより効果的です。

症状緩和のために今日からできるセルフケア大全

専門的な治療と並行して、日々の生活の中で自分自身でできることもたくさんあります。
セルフケアは、つらい症状の波を乗りこなし、心と体の状態を安定させるための大切な土台となります。
無理のない範囲で、今日から一つでも取り入れてみてください。

カテゴリ推奨されること避けるべきこと
食事– 血糖値を安定させる: 1日3食を基本に、玄米や全粒粉パンなど血糖値が上がりにくい食品を選ぶ
– 必要な栄養素を摂る: 乳製品、大豆製品、緑黄色野菜など
– イソフラボン: 納豆や豆腐などの大豆製品を摂る
– カフェインの過剰摂取: コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどは不安やイライラを増幅させることがある
– アルコールの摂取: 睡眠の質を下げ、翌日の抑うつ感を強める原因に
– 精製された糖質・塩分: 菓子パン、スナック菓子、加工食品は血糖値の乱高下やむくみを引き起こしやすい
運動– 有酸素運動: ウォーキング、ジョギング、ヨガなど、心地よいと感じる程度の運動を週に数回行う
– ストレッチ: 体の緊張をほぐし、リラックス効果を高める
– 過度な運動: 体に大きな負担をかける激しいトレーニングは、かえってストレスになることがある
睡眠– 規則正しい生活リズム: 毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝ることを心がける
– リラックスできる環境: 就寝前にスマートフォンを見るのをやめ、温かいお風呂に入るなどして心身を落ち着かせる
– 寝る直前の食事や飲酒: 消化活動やアルコールの分解が深い眠りを妨げる
ストレス管理– リラックスできる時間を作る: 音楽を聴く、アロマを焚く、好きな本を読むなど、自分が心から落ち着ける時間を持つ
– マインドフルネス・瞑想: 「今、ここ」に意識を集中させることで、不安な思考から距離を置く練習をする
– 完璧主義: 「〜ねばならない」という考えを手放し、自分に優しくすることを意識する
– 無理なスケジュール: 不調な時期は予定を詰め込みすぎず、休息を優先する

まとめ:一人で抱え込まないで。専門家への相談が回復への第一歩

毎月繰り返される気分の激しい落ち込みや不安感。
それがPMS/PMDDとうつ病の併発によるものだとしたら、その苦しみは計り知れません。
しかし、このブログを通して、その不調が決して「気のせい」や「我慢が足りない」せいではなく、ホルモンと脳の働きが関わる医学的な問題であることがお分かりいただけたかと思います。

重要なのは、PMDDとうつ病は併発する可能性があり、それは決して珍しいことではないという事実です。
そして、SSRIや低用量ピルといった有効な治療法や、日々の生活で実践できるセルフケアが存在します。
あなたの苦しみは、適切な診断と治療、そして正しい知識を持つことで、必ず和らげることができます。

もし、あなたの症状が日常生活に支障をきたしているのであれば、どうか一人で抱え込まないでください。
婦人科や心療内科・精神科といった専門家に相談することは、回復への最も確実で、最も重要な第一歩です。
勇気を出して専門の扉を叩くことが、あなたらしい穏やかな日々を取り戻すための始まりとなるはずです。


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